「給料の67%がもらえる」。育児休業給付金の説明は、たいていこのひとことにまとめられています。

でも体験談にあるとおり、実際に受け取ってみると「思ったより少ない」と感じた——そういう声は珍しくありません。少なく感じる理由は、条文の計算式を見れば説明がつきます。

基準は「休業開始時賃金日額」

雇用保険法61条の7第6項を要約すると、1支給単位期間(約1か月)の額はこうです。

休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(休業日数が通算180日に達するまで) 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%(181日目から)

「1支給単位期間」は、暦の1か月ではありません。61条の7第5項は、育休を開始した日から、翌月の同じ日の前日までを1つの区切りとし、この「同じ日」を休業開始応当日と呼んでいます。

支給単位期間の区切り方(雇用保険法61条の7第5項)
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    10月10日に育休を開始

    最初の支給単位期間は、10月10日から11月9日まで。

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    以後も「10日」で区切る

    11月10日から12月9日まで、12月10日から1月9日まで……と続きます。

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    育休を終えた日で最後の区切り

    最後の期間は、育休を終えた日まで。支給日数は、その期間の初日から終えた日までの日数です(6項2号)。

翌月に同じ日が無いとき(31日始まりで翌月が30日までなど)は、その月の末日で区切ります。支給日数は、最後の期間以外は30日です(同条6項1号)。

この「休業開始時賃金日額」は、育休に入る前の賃金から算定される日額のこと。手取りではありません。ここが、「67%」という数字と実際の振込額がずれる出発点です。

賃金日額は、どう決まるのか

61条の7第6項は、育休を開始した日の前日を「離職の日」とみなして、同じ法律の17条で計算すると定めています。その17条がこれです。

賃金日額は、(中略)被保険者期間として計算された最後の六箇月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。(中略))の総額を百八十で除して得た額とする。

— 雇用保険法 第17条第1項

かみくだくと、育休に入る直前の6か月分の賃金を足して、180で割る。これが1日あたりの基準です。

そして、括弧の中が効いてきます。「三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」は除かれる。年2回の賞与は、ここに入りません。年収で「このくらい」と見込んでいる人ほど、計算の土台が思っていたより小さくなります。「思ったより少ない」のいちばん大きな理由は、たいていここにあります。

もうひとつ、分割して取る人に関わる点。同じ6項は、同じ子について2回以上の育休をした場合、基準にするのは初回の育休だと書いています。2回目に入る前に給与が変わっていても、賃金日額は初回の開始前の6か月で決まったままです。

「思ったより少ない」の内訳
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    基準が手取りではない

    休業開始時賃金日額は賃金から算定される値。ふだん見ている手取りとは別物です。

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    賞与が入っていない

    直前6か月の賃金÷180で、3か月を超える期間ごとに払われる賃金(賞与)は除かれます(雇用保険法17条1項)。

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    181日目から50%に下がる

    67%が続くのは通算180日まで。半年を超える育休では、後半の額が下がります。

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    上限がある

    支給額には上限が設けられていて、賃金が高い人ほど「67%」との体感差が広がります。

④の上限額は毎年見直されるため、この記事には書いていません。申請時点の額をハローワークで。

ただし、逆に効く要素もあります。給付金は非課税です。

租税その他の公課は、(中略)給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。

— 雇用保険法 第12条(第61条の6第5項により育児休業等給付に準用)

さらに育休中は社会保険料も免除される(次の記事で扱います)ので、手取りベースで見れば、額面の割合ほどの落差にはならない——という説明が広く流通しています。それでも、上限と180日の壁だけは、先に知らないと設計が狂います。

育児休業給付金の概算を出す

直近6か月の平均で入れてください。残業代や通勤手当は含み、賞与は含みません。

円
賃金日額(概算)10,000円
1か月あたり・180日目まで(67%)201,000円
1か月あたり・181日目から(50%)150,000円

雇用保険法61条の7の計算式で出した概算です。賃金日額は直近6か月の賃金総額を180で割った額で、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含みません。上限額は毎年改定されるためここには反映していないので、上限に近い方は実際の額がこれより低くなります。確定額はハローワークが決定します。入力した数字がどこかに送信されることはありません(この画面の中だけで計算しています)。

受けるための要件

61条の7第1項の骨子は、ふたつです。

  • 1歳に満たない子を養育するための休業であること(延長なら1歳6か月・2歳)
  • 休業を開始した日前の2年間に、みなし被保険者期間が通算12か月以上あること

この「12か月」は、ただの在籍月数ではありません。厚生労働省の育児休業等給付のQ&Aは、休業を開始した日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(11日以上の月が無い場合は、就業した時間数が80時間以上の月)が12か月以上あること、と説明しています。

同じQ&Aは、この2年間に第1子の育児休業や本人の疾病等により、引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった期間がある場合は、要件が緩和され、支給要件を満たす場合があるとも書いています(さかのぼる期間を延ばす仕組みは、61条の7第1項の括弧書きにあります)。

転職して間もない人や、休業が続いた人は、この数え方が効いてきます。当てはまりはハローワークへ。そして前の記事でも触れたとおり、同じ子について3回目以降の育児休業には支給されません(同条2項)。

会社から賃金が出た場合

当該賃金の額に当該支給単位期間における育児休業給付金の額を加えて得た額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の百分の八十に相当する額以上であるときは、(中略)減じて得た額を、当該支給単位期間における育児休業給付金の額とする。

— 雇用保険法 第61条の7第7項

賃金と給付金を合わせて80%のラインを超えると減額。賃金だけで80%を超えれば、その期間は支給なし。育休中の一部就労や、会社独自の手当がある場合に関わってくる条文です。

育休中に働いた日がある場合

賃金の額とは別に、働いた日数にも線があります。厚生労働省の育児休業等給付のQ&Aは、支給の要件として、1支給単位期間中の就業日数が10日以下(10日を超える場合は、就業した時間数が80時間以下)であることを挙げています。

また同じQ&Aは、その就業が臨時・一時的で、就業後も育児休業をすることが明らかであれば、職場復帰とはせず、支給要件を満たせば支給対象になると説明しています。

つまり、育休中の就業には2つのものさしがかかります。日数(または時間)の線と、上の80%の線です。どちらに当たるかは日程と賃金の額で変わるので、働く予定が出てきたら、その前に勤務先とハローワークに確かめてください。

2025年4月からの上乗せ

2025年4月に、出生後休業支援給付金という上乗せが始まっています。雇用保険法61条の10がその中身を定めていて、額は6項にあります。子の出生後の休業を対象期間内に取った日数(28日を超えるときは28日)に賃金日額相当額を乗じた額の、100分の13。育児休業給付金の67%と合わせて、手取りに近い水準にする設計です。

要件は3つ。1項が並べています。

出生後休業支援給付金の要件(雇用保険法61条の10第1項)

13つとも満たしたとき

  • 出生後休業を開始した日前の2年間に、みなし被保険者期間が通算12か月以上あること(1号)
  • 対象期間内にした出生後休業の日数が、通算14日以上であること(2号)
  • 配偶者も、その子について出生後休業をしたこと(3号。配偶者の側は、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間で通算14日以上)

満たすと: 対象期間内に休んだ日数(28日が上限)について、賃金日額相当額の13%が上乗せされる(6項)

いずれも条文の要件です。厚生労働省令に委ねられている部分があるので、自分の日程での当てはめはハローワークで確かめてください。

3つ目でつまずきそうに見えますが、この配偶者の要件が外れる場合が、2項に列挙されています。配偶者がいない場合、配偶者が雇用される労働者でない場合、そして配偶者がその子について産後休業(労働基準法65条2項)その他これに相当する休業をした場合。母親が産後休業を取っているなら、父親の側はこの3つ目を問われない、ということです。ほかに、厚生労働省令で定める場合も外れます。産後休業の間のお金が雇用保険ではなく健康保険の出産手当金から出ることは、産休と育休は、お金の出どころが違うで整理しています。

「対象期間」は、父と母で長さが違う

日数を数える枠そのものが、産後休業を取ったかどうかで変わります。7項が分けています。

対象期間の数え方(雇用保険法61条の10第7項)
  • その子について産後休業をしなかったとき

    出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間

    産後休業を取らない側(多くは父親)

  • その子について産後休業をしたとき

    16週間で数える期間(予定日どおりなら出生の日から16週間を経過する日の翌日まで)

    産後休業を取った側(多くは母親)

出産が予定日からずれた場合、早く生まれたときは出生の日から、遅く生まれたときは出産予定日から、それぞれ数え始めます。

回数にも歯止めがあります。3項により、同一の子についての出生後休業は、合算した日数が28日に達した日より後のものは支給の対象になりません。5回目以降も、やむを得ない理由として厚生労働省令で定める場合を除いて対象外です。

持ち帰るのは、こう。最初の28日ぶんに13%の上乗せがある。両親それぞれ14日以上が原則で、母親が産後休業を取っていれば父親側は配偶者の要件を問われない。

申請の主体と、締切

厚生労働省のQ&Aによると、支給申請は原則として事業主を経由します。本人が望めば本人申請も可能。初回の申請期限は「育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日まで」。振込は、支給決定日からおおむね1週間程度です。

初回の締切が「4か月後の月末」まで許されている。この構造が、最初の入金がなかなか来ない理由につながっています。生活設計に直結する話なので、入金と支払いのタイミングの記事で、出ていくお金と並べて時系列にします。